特別養子縁組後の名の変更・改名手続き
近年、特別養子縁組の制度を利用して親子となる家族が増えています。特別養子縁組によって親子となると、養親の戸籍に入籍するため、子の苗字(氏)は、養親の苗字(氏)となります。しかし、子の下の名前である名については、生まれながらの名のまま変更がありません。このため、できれば自分たちの家庭で、実際のわが子と同様の愛情を注ぎたいという理由で、子の名を変更したいと希望されるご家庭があります。
このような特別養子縁組後の子の改名について、どのように手続きを行うべきかを検討します。
目次
特別養子縁組後の家庭裁判所への名の変更許可申立て
下の名前である名を変更するには、家庭裁判所に対する名の変更許可申立てが必要となります。これは、特別養子縁組を経た子供であっても同様であり、名の変更許可を得るためには、その理由として、戸籍法第107条の2により、正当な事由の存在が求められています。
第百七条の二 正当な事由によつて名を変更しようとする者は、家庭裁判所の許可を得て、その旨を届け出なければならない。
また、子が15歳未満の場合は、子の養親である父母が許可申立を行います。
家庭裁判所の氏名変更許可申立て理由
名の変更許可申立ては、その申立てに正当な事由があるどうかが判断されます。また正当な事由という規定が非常にあいまいであり、さらに、申し立てをすれば必ず認められるとは限りません。
名の変更許可申立てが権利の濫用とみられる場合や、公序良俗に反する場合などは、申立てが却下されるため、理由書、立証資料等で、変更の必要性を訴えていく必要があります。
名の変更許可申立ては、ハードルが高いと言えますが、これまでの判例などを考慮ながら、変更申立てをすすめることになります。
なお、特別養子縁組においては、養子縁組前から、里親と子供が生活する機会をもうけられますので、その時から、新しい名前を使用して、新しい名前が広く認知されていることを立証できるようにしておくほうが良いと思われます。
また、名の変更許可申立てが裁判所で認められない場合は、引き続き、永年使用などによる実績を積み重ね、再び、名の変更許可申立てを求めることになります。
名の変更許可が裁判所で認められた後は
特別養子縁組後の子供の名の変更許可については、その理由や立証資料がしっかり整っている場合は、子が乳児であっても認められる傾向があります。このため、養親となった父母が名の変更許可申立てまでに十分に時間をかけ、慎重に申立準備をする必要があります。
通常は、名の変更許可が認められる場合は、即日、審判書が交付されるため、市区町村役場にて審判書と名の変更届を提出し、子の改名手続きが完了します。