
>養子縁組をしていた養親が亡くなった後、「養子関係を解消して旧姓(縁組前の苗字)に戻りたい」と考える方は少なくありません。当事者の一方が亡くなっている場合の離縁は、まず、家庭裁判所の許可が必要です。
ここでは、養親が死亡したあとに裁判所の許可を得て死後離縁をして、旧姓に復氏する手続について検討します。
養親が死亡した後に離縁をして旧姓に戻したい場合
養子縁組をすると、養子は養親の苗字(氏)を称することになります。その後、養親が死亡した場合、養子縁組の関係は自動的には終了しません。そのため、養親が亡くなっても、養子の苗字(氏)は養親の苗字のままとなります。
「養親との縁組前の旧姓(縁組前の苗字)に戻したい」「養親とは縁が切れたのだから苗字も元に戻したい」というご要望をお持ちの方がいらっしゃいます。養親と養子の双方が生存している場合は市区町村役場に離縁届を提出すれば縁組は解消できます。しかし、養親がすでに死亡している以上、通常の協議による離縁(養親本人の同意を得る方法)は不可能です。
このような場合、民法が定める「死後離縁」の制度を利用し、家庭裁判所に離縁の許可申立てを行うことで、養親との離縁が認められ、旧姓に戻すことができる場合があります。
死後離縁の民法の規定
養子縁組の離縁は、原則として養親と養子が協議して行いますが、民法第811条第6項は、養親または養子の一方が死亡した後の死後離縁について、次のように定めています。
(協議上の離縁等)
第七百六十七条
6 縁組の当事者の一方が死亡した後に生存当事者が離縁をしようとするときは、家庭裁判所の許可を得て、これをすることができる。
上記の規定により、養親が死亡した後であっても、生存している養子(またはその法定代理人)が家庭裁判所に申立てを行い、許可を得ることで離縁が成立します。この制度が「死後離縁」と呼ばれるものです。
死後離縁をすることにより、親族間の扶養義務が消滅し、民法第816条第1項の規定により復氏(養子縁組前の氏に戻る)することになります。なお、すでに存在していた相続には変動はありません。
(協議上の離縁等)
第八百十六条
1 養子は、離縁によって縁組前の氏に復する。ただし、配偶者とともに養子をした養親の一方のみと離縁をした場合は、この限りでない。
裁判所への死後離縁許可の申立て手続き

養子縁組関係の当事者の一方が死亡している場合は、家庭裁判所の死後離縁許可の申立てによる審理を経て、裁判所の許可を得て、縁組を解消することができます。
家庭裁判所は、離縁を許可するかどうかを審理する際に、申立ての動機や目的、縁組関係の実態、関係者への影響などを総合的に考慮します。たとえば、申立ての理由が相続財産の取得など財産目的のみである場合や、他の関係者(例:養親の相続人)の利益を不当に害すると判断される場合は、許可が下りないこともあります。
死後離縁の申立ては、家庭裁判所に申し立てを行えば必ず認められるものではなく、申し立て理由や立証資料など家庭裁判所が審査し、その審査結果に基づいて可否を決定するため、慎重に申し立てを行う必要があります。
裁判所での死後離縁許可申立てが許可された後の手続き
裁判所への死後離縁許可申立てが審理を経て、許可となった場合は、裁判所より確定証明書を取得し、市区町村役場で離縁届を提出します。そして数日後に、復氏後の戸籍全部事項証明書に離縁の内容が記載されるので、復氏後の戸籍全部事項証明書を取得して、そのほか運転免許証、パスポート、銀行口座などの氏名の変更を行います。
死亡養親と死後離縁で縁組解消して苗字を戻す手続きのまとめ
養子縁組の当事者の一方が死亡している場合は、家庭裁判所の審理により、死後離縁が認められ、養子縁組前の氏に復氏できる場合があります。
ただし、死後離縁の申立ては、必ず認められるわけではなく、申立ての理由や立証資料を裁判所が審査するため、入念に準備をし許可を求めていく必要があります。
家庭裁判所への死後離縁の申立てを検討されている方は、当センターの運営事務所まで、一度ご相談下さい。


